社会学的視点から暴力団を研究する異色の学者、久留米大非常勤講師の広末登さん(50)=犯罪社会学=が、現代の組員や元組員の実情に迫る新著を出版した。警察の取り締まりにより、暴力団の構成員は減少傾向にある。著書では、離脱した構成員の社会復帰を支える仕組みの重要性を説く。
広末さん自身、身近に暴力団員がいたという。貧しい家庭に育ち、非行に走った中学時代には、高級ブランドの服や時計を身につけた組員たちに憧れた。
転機は中3の時。バイクを盗んで補導され、連れて行かれた警察署で、手錠をかけられて泣く少し年上の少年を見た。「明日は我が身だ」。組員や非行グループと距離を置き、中学を卒業後、専門学校を経て就職した。だが、上司から学歴を馬鹿にされ奮起。大学への進学を果たした。
大学で犯罪社会学を学ぶうちに、暴力団にいた知人や組員になった友人たちのことを思い出し、「自分たちの道を分けたのは何だったのか」と考えた。この疑問を研究テーマに据え、組員や元組員への取材を開始した。
ある組員は幼少期、父親が指名手配されていたため家族で逃亡生活を続けた。父の死後、母と内縁関係になった男から虐待を受け、非行に走った。17歳で覚醒剤に手を出すなどして少年刑務所へ。22歳の時、幼い頃に優しくしてくれた先輩に誘われて暴力団に入った。
ある元組員は子どもの頃、酒に…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル